
日本で生活する上で欠かせないもののひとつが健康保険です。「国民健康保険」は、特にフリーランスや自営業者、退職後の方々にとって重要な制度で、安心して医療を受けられるようにするための健康保険制度です。この記事では、国民健康保険の仕組みや保険料の計算方法、加入手続きの流れ、さらに被用者保険との違いまで、わかりやすく解説していきます。
国民健康保険とは
国民健康保険とは、安心して医療を受けられるようにするための健康保険制度です。主に、日本に住んでいるフリーランスや個人事業主、会社の健康保険に入っていなく、他の医療保険制度に加入されていない方向けです。これは市区町村が運営し、加入者は定期的に保険料を支払い、病気やケガをした際に医療費の70%が公費で補助される仕組みになっています。
被用者保険と国民健康保険の違い
日本には主に2つの公的医療保険制度があります。それが「被用者保険」と「国民健康保険」です。これらは、病気やケガの医療費を一部負担する制度ですが、加入対象や保険料の計算方法、運営主体に違いがあります。
被用者保険は、会社員や公務員など、企業や団体に属して働く人が加入する保険です。企業や健康保険組合、共済組合などが運営しています。保険料は会社と従業員が半分ずつ負担し、保険証は勤務先から交付されます。また、被扶養者の分も追加料金がなしでカバーされる点がメリットです。
一方、国民健康保険は、自営業やフリーランス、退職者などの会社の健康保険に加入していない方が加入する保険です。加入者が全額自己負担で、市区町村の自治体が運営しています。また、家族が一緒に加入する場合、それぞれに保険料がかかる仕組みです。さらに、会社員のように自動的に加入するのではなく、自身で市区町村に申請する必要があります。
なお、より詳しい情報は日本医師会の公式サイトをご覧ください。
国民健康保険のメリット
① 会社員でなくても医療保障を受けられる
会社員は企業の健康保険に加入できますが、フリーランスや個人事業主は自分で医療費を負担する必要があります。そのため、自営業者やフリーランス向けの医療保障で、会社に属さなくても、公的な医療保険に加入できることで、万が一のときの医療費への不安を軽減できます。
② 医療費の負担を軽減できる
国民健康保険に加入すると、病院での診察や治療費の約70%が保険でカバーされます。そのため、自己負担額が約30%に抑えられ、医療費の負担を減らすことができます。特に、突然の病気やけがなどの際には、経済的な負担を軽減する助けになります。
③ 全国どこでも使える
国民健康保険は全国の医療機関で利用できます。国民健康保険に加入することで、日本全国どこの医療機関でも保険証を提示するだけで保険が使えます。また、引っ越しをした場合でも、新しい住所の自治体で継続利用でき、旅行や出張先で体調を崩しても、国民健康保険を利用できます。
④ 出産育児一時金や葬祭費、高額療養費制度などの給付も受けられる
もし高額な医療費が発生した場合でも、「高額療養費制度」が適用されます。また、医療費の補助だけでなく、被保険者やその扶養家族が出産した場合には「出産育児一時金」が支給されます。さらに、国民健康保険の加入者が亡くなった場合には、遺族に一定額の葬祭費が支給されます。
⑤ 国民健康保険料は所得控除の対象になる
国民健康保険料は単なる医療費の負担軽減だけでなく、節税のメリットもあります。所得税の控除対象となるため、納税額を抑えることができます。
国民健康保険の加入方法
日本に住んで、会社の健康保険に加入していない方(自営業やフリーランス、退職者など)は国民健康保険に加入する必要があります。
その加入方法は、お住まいの市区町村の役所(区役所・市役所など)・「ぴったりサービス」からのオンライン申請が可能です。マイナンバーカード・身分証明書で、または、退職証明書や在留カード、印鑑(必要な自治体もあり)があります。以下のような場合には、14日以内に手続きを行うことが推奨されます。
● 会社を退職したとき
● 引っ越しをしたとき
● 海外から帰国して住民登録をしたとき
● 家族の扶養から外れたとき
● フリーランスとして働き始めたとき
● 子供が生まれたとき
国民健康保険の切り替え
ライフスタイルの変化に伴い健康保険を切り替えるタイミングが発生することがあります。例えば、仕事を変えたときや退職した際、引っ越した際などです。国民健康保険への切り替えは、時期を誤ると未加入期間が生じる可能性があります。こうした手続きを怠ると、その期間の医療費を全額自己負担しなければならない恐れがあるため、注意が必要です。
【おすすめポイント】
手続きは原則として14日以内に行うことが推奨され、本人確認書類や必要書類を持参し、お住まいの市区町村役所で申請しましょう。遅れると無保険となり、医療費が全額自己負担になる可能性があります。
国民健康保険の加入の手続き
国民健康保険の加入の手続きは、本人確認書類 (マイナンバーカード ・印鑑)の必要な書類を持参してお住まいの市区町村窓口に行く、窓口にて「国民健康保険加入の旨」を伝え、受付の担当者の指示に従い、本人確認を行い、その場で国民健康保険被保険者証(保険証)が交付され、手続きは完了です。また、「ぴったりサービス」からのオンライン申請も可能ですが、すべて市区町村の役所が可能ではないです。
| 状況 | 必要な書類 |
|---|---|
| 会社を退職したとき | 健康保険の資格喪失証明書 |
| 引っ越しをしたとき | 転出証明書 |
| 海外から帰国して住民登録をしたとき | パスポート、在留カード |
| 家族の扶養から外れたとき | 健康保険の資格喪失証明書 |
| フリーランスとして働き始めたとき | マイナンバーカード、本人確認書類 |
| 子供が生まれたとき | 出生届、別途戸籍の手続き |
国民健康保険料
国民健康保険に加入すると、毎月または年に国民健康保険料を支払う必要があり、医療費の自己負担を抑えるために加入者が支払う保険料のことです。
この保険料「住んでいる自治体」と「前年度の所得」によって決まります。この保険料「住んでいる自治体」と「前年度の所得」によって決まります。保険料は、以下の3つの要素で構成されています。
① 医療分保険料
② 後期高齢者支援金分保険料
③ 介護分保険料(40歳以上65歳未満が対象)
国民健康保険料の計算方法
国民健康保険料の計算方法は、自治体ごとに異なりますが、一般的には3つの要素をもとに決定され、保険料を算出する際に使われる方式が所得割、均等割、平等割です。
① 所得割は(前年度の「総所得金額」−「基礎控除額」)× 各自治体が定める料率 によって計算されます。前年度の所得額を基に計算し、所得が高いほど保険料も高くなります。
※ 自治体によっては料率が約7.0%〜10.0%程度に設定されています。
② 均等割は「1人あたりの均等割額 × 加入者数」となります。世帯の人数が多いほど保険料も増加します。
※ 均等割額は自治体によって異なります。
③ 平等割は「自治体が定めた年間の定額 × 世帯人数」となります。すべての世帯に均等に課される基本料金です。
※ 金額や計算方法は市区町村ごとに異なります。
計算例
東京都江東区 (2025年度)の場合
条件、単身者・前年の所得300万円・扶養家族なし
前年所得 3,000,000円 − 基礎控除 430,000円 = 2,570,000円
| 区分 | 所得割 | 均等割額 | 平等割額 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 2,570,000円 × 7.71% = 約198,147円 | 1人 × 47,300円 = 47,300円 | 1世帯 × 660,000円= 660,000円 | 905,447円/年(≒ 月75,545円) |
| 支援金分 | 2,570,000円 × 2.69%= 約69,133円 | 1人 × 16,800円 = 16,800円 | 1世帯 × 260,000円= 260,000円 | 345,933/年(≒ 月28,828円) |
| 介護分(40歳以上65歳未満) | 2,570,000円 × 2.25% = 約57,825円 | 1人 × 16,600円 = 16,600円 | 1世帯 × 170,000円= 170,000円 | 244,425円/年(≒ 月20,369円) |
保険料の軽減制度
国民健康保険料の支払いが困難な場合、保険料の軽減制度を利用できます。これは、収入や生活状況に応じて保険料の一部を軽減する制度で、災害や病気、所得が一定以下の世帯、廃業した人、事故で生活が困難な人などが対象です。
主な軽減対象は均等割・平等割で、所得に応じて7割、5割、2割の軽減があります。また、自動軽減ではないため申請が必須で、年度ごとの更新が必要な場合もあります。申請は自治体の窓口で行い、所得証明や離職票などの書類が必要です。
例;東京都江東区 (2025年度)の場合
| 減額区分 | 世帯主および国保加入者の総所得金額等の合計が下記の金額以下になる世帯 |
|---|---|
| 7割減額 | 43万円(注) |
| 5割減額 | 43万円(注)+(30.5万円×国保加入者の数) |
| 2割減額 | 43万円(注)+(56万円×国保加入者の数) |
国民健康保険料の支払い方法
国民健康保険料の支払い方法は自治体により異なりますが、一般的には次のような方法があります:
① 口座振替(自動引き落とし)
② コンビニや郵便局、銀行などで納付書を使い
③ クレジットカード(対応している自治体のみ)
④ アプリで納付書のバーコードを読み取って支払い可能(対応している自治体のみ)
支払いのタイミングは、年払い (一括払いで1年分を支払う)、毎月払い ( 1年を通して12回に分けて支払う)、分割払い(4期や6期に分けて支払う)があります。
※ 自治体によって対応している方法が異なるので、公式サイトで確認しましょう。
まとめ
国民健康保険は、主にフリーランスや個人事業主など、会社員でない日本居住者を対象とした健康保険制度です。市区町村が運営し、自己負担は基本的に30%、保険料を支払うことで医療費の70%が補助されます。さらに、全国の医療機関で利用できるほか、高額療養費制度や出産育児一時金、葬祭費などの給付も受けられます。また、被用者保険と国民健康保険は加入対象や保険料の計算方法、運営主体に違いがあります。
加入や切り替えの手続きは、市区町村の役所やオンラインサービス(ぴったりサービス)を通じて行います。重要なのは、「退職」「転居」「扶養から外れる」といった状況変化があった際には、14日以内に申請することです。また、保険料の支払い方法も柔軟で、年払い・毎月払い ・分割払いであり、口座振替や納付書による支払い、クレジットカード、スマホアプリなどが用意され、自分のライフスタイルに合わせて選ぶことができます。ただし、自治体によって対応している方法が異なるので、公式サイトで確認しましょう。
【免責事項】
この記事は国民健康保険制度に関する一般的な情報提供を目的として、法的・税務的な助言をするものではありません。最新の情報や詳細な手続きについては、お住まいの市区町村の窓口や公式サイトをご確認のうえ、自身の判断で対応してください。
よくある質問
回答: 会社の健康保険に加入していない方(自営業、フリーランス、退職者など)が対象です。
回答: マイナンバーカード・本人確認書類、それぞれな場合によって必要な書類です。例えば、会社を退職したとき、健康保険の資格喪失証明書が必要です。
回答: 原則として14日以内に手続きを行ってください。
回答: 滞納が続くと、保険証の使用権が停止される場合があり、「保険証の制限」や「延滞金」の対象になります。